「ん?今日も、アイツらは休みか。最近、休みがちだな。まぁ、いいか。授業、始めるぞ。」
担任の越智先生が呑気に言う。クラスのみんなも、もう慣れたみたいで、さほど気にしてはいない様子。
ただ、浅野くんと小島くん、有沢さんたちは、何かを知っているみたいで、いつも互いに目を合わせ、窓の方を眺めたり、誰も座っていない椅子を見つめたりしている。
そして、どちらにも属していないのが私。ずっとずっと慣れずに心配ばかりしているけれど、どうして彼らがここに居ないのかはわからない。
最初に居なくなったのは、石田くん。彼は、真面目な人で、それまで欠席なんて、ほとんど無かったと思う。それなのに、今日まで連日欠席。
そして、井上さん。彼女は、とても元気な子で、滅多に休んだりしないのに。そういえば、その少し前に、大怪我をして学校に来たことがあった。それが関係しているのかは、わからないけれど。
最後に、黒崎くん、茶渡くん。彼らは、不良の人たちと喧嘩していることが多かったけど、本当は優しくて、真面目で、成績も良いぐらいだし、欠席もそんなに無かった。
その間に、すごく派手な人たちが黒崎くんを呼びに、学校に来たこともあった。それから、みんなが学校に来なくなる直前に、黒崎くんが1日だけ学校に来たこともあった。その日、黒崎くんと有沢さんが喧嘩みたいなことをしていて、廊下の窓が割れた。
あと、転校生の平子くんも、最近見ていない。平子くんは、みんなと仲が良かったわけじゃないと思うけど、なんだか黒崎くんとは、学校に来る前から、知っていたみたいだった。
私は、そんな出来事を見てきた。たぶん、誰よりも見てきた。だって、私も黒崎くんのことが好きだから。
中学校の友達とは離れてしまって、今のクラスには、高校で知り合った人だけ。それでも、今は新しい友達がいるし、そんなに仲良くない人たちも、とても良い人ばかりで、正直このクラスが大好きだ。
そして、その中でも、黒崎くんを好きになった。
入学した日、早速喧嘩をしている黒崎くんと茶渡くんを見かけ、その人たちが同じ教室に居たときは、正直ショックだった。というか、恐ろしかった。だから、あまり関わらないようにと、彼らを遠巻きに見ていた。
だけど、その日の喧嘩に巻き込まれそうになっていた、浅野くんと小島くんと話しているとき、とても恐そうな人たちには見えなかった。有沢さんや井上さんといった女の子と話しているときもあって、何だか黒崎くんって悪い人じゃないなぁ、と思い始めた。
そのとき、私が黒崎くんばかり見ていることに気がついた。これって・・・、もしかして・・・・・・。なんて、考えながら家へ帰ると、お母さんが泣いていた。「どうしたの?」と聞くと、お母さんは何も言わず、ただ指をさした。そこには、最近具合の悪かった、うちのコロが寝転んでいた。「ただいま」って言っても、いつものように、尻尾を振ってくれず、ずっと寝転んだままだった。「コロ?」って、何度呼んでも無反応で、ただ、お母さんの涙がどんどん流れてくるだけだった。コロの状態をようやく現実として受け入れた私も、その場で泣いた。その日は、ずっとずっと泣いていた。
次の日、そんなことは誰にも気付かれずに、いつものように振舞っていた。ペットのこととは言え、「コロが死んでショックだ」なんて、友達に言っても、気を遣わせてしまうと思ったからだ。本当に、誰にも気付かれていないと思っていた。それなのに、その日初めて会話した黒崎くんに言われた。
「・・・だったよな?」
「く、黒崎くん?!ど、どうしたの?」
「いや、その・・・。何か・・・あったのか?」
「えっ?」
「何か・・・、いつもより、元気ねぇ気がして。」
そう言いながら、黒崎くんは照れくさそうに、頭をポリポリかいていた。私は、本当に驚いた。だって、友達にも気付かれなかったのに。どうして、今日初めて喋った黒崎くんにバレたんだろうって。その驚きがあまりに大きすぎて、私は事実を話してしまった。
「言いたくないなら、いいんだ。」
「あの・・・。言いたくないわけじゃないんだけど・・・。実は、昨日。うちのペットのコロが死んじゃったの。それで、悲しくて。」
「そうだったのか。・・・悪いな、こんなこと聞いちまって。」
「ううん!全然!!気にしないで。それに、黒崎くんに話したおかげで、すこし楽になった気がするよ。ありがとう。」
うっかり話してしまったことによって、やっぱり空気が重くなってしまった。それを少しでも、良くなるようにと思って、私は笑顔でそう言った。
「そうか。・・・ま、あんまり引きずるなよ。じゃないと、コロも浮かばれないと思うぜ。ちゃんと、自分は大丈夫だって、言ってやれるように、な。」
「・・・あ、うん。ありがとう。」
私がさっき重い空気に少し抵抗したのとは大違いで、黒崎くんのその言葉は、一気に雰囲気を元に戻した気がした。
「コロは、元気なが好きなんだから。」
最後の言葉に、何だかドキドキしてしまって。私は照れながら、お礼を言った。
「・・・ありがとう。」
「いや、また何かあったら言えよ。」
それだけ言って、黒崎くんはまた笑顔で、立ち去った。
それ以来、もっと黒崎くんのことが気になり始めた。そして、喋る機会はほとんど無かったけれど、これは黒崎くんのことが好きなんだ、と思えるようになった。
だけど、そのことを誰にも話さなかった。だから、私の気持ちを誰も知らない。それでも、黒崎くんと有沢さんは幼馴染であるという話や、井上さんが黒崎くんのことを好きだという話は、自然と私の耳にも入ってきた。彼女たちとは、特別仲が良いわけではないけれど、彼女たちもとてもいい人なので、私は好き。だから、黒崎くんと仲の良い、有沢さんや井上さんを羨ましく思ったりはするけれど、有沢さんを恨んだり、井上さんをライバル視や敵対視したりすることはなかった。
だけど、どうして私は黒崎くんと、そんなに仲良くないんだろうとは、幾度と無く思った。そして、今もそう思う。有沢さんは、みんなが来なくなった理由を知っているのだと思う。井上さんは、黒崎くんたちと一緒に来なくなったのだと思う。私は、どちらでもない。私だって、こんなに黒崎くんのことが大好きで、みんなのことを心配しているのに。
みんなが心配で、でも黒崎くんが大好きで。そして、何もわからない自分が情けなくて、寂しくて、悲しい。それを誰にも言えない自分も馬鹿みたい。
ただ、そんなことを感じていても、彼らは帰って来ないし、帰って来ても私が黒崎くんと仲良くなれるわけじゃない。
そして、また彼らのいない1日が今日も始まる。こんな日が、あと何日続くのかさえ、私にはわからないまま・・・。
珍しく、切ない話です。たまには、書いてみたくなるんですよね!
というか、「BLEACH」で書こうと思うと、結構シリアスっぽくなる傾向があるようです。
まぁ、「BLEACH」にもシリアス部分が結構あるからでしょうね。そして、そういう部分が好きだったりします。
それでも!いつかは、「BLEACH」で楽しい夢も書いてみたいと思っています。
あと、「BLEACH」と言えば、お洒落なタイトルですよね?しかも、英語が多かったりします。
私もタイトルは英語で書くので、中途半端じゃいけないと思い、ちょっと頑張ってみました・・・!って言っても、ただの駄洒落ですが・・・;;
まず、タイトルを無理矢理に訳してみると、「遠く、遠く、そして、後ろ」とかになると思うんですね。
でも、"and"を"と"、"back"を"奥"と訳してみると、「遠く、遠く、と奥(とおく)」となります。
・・・あ、すみません。それだけです・・・orz